9話 剣を求めて
翌日、心配するお父さんを押し出して、あたしも家を出た。
学校に行く振りをして。
蘇我は、いつもの場所で待っててくれてるかもしれない。
でもごめん。
今日は行かない。
あたしは、手の中の柴犬つるぎをじっと見た。
そこには、大きな文字でDEADと書かれていた。
キュウを蘇らせる可能性があるなら、探しに行く。
さんざん探し回って、夕方。下校時刻頃。
夢の中で見た古沼が見つかった。
しかもそれは、あたしの小学校にすぐ隣だった。
「どおりで……よく夢に出てきたわけだ」
あたしはがっくり膝をついた。
こんな学校の近くに来て、先生に見つかったらどうしよう。
「狐……さん」
おそるおそる呼びかける。
夕暮れの学校近くはざわざわしている。
「狐……さん」
なんか、やっぱり騙された?
あたし、もしかして怪しい人?
ちょっと悲しくなってしまって、帰ろうと思い、後ろを振り返った。
「きゃあああ!!」
びっくりしてあたしは悲鳴をあげてしまった。
蘇我がいた。
夕暮れにひっそりと、あたしの後ろに立っていた。
しかも、えらい怒っている。
「……蛍っ!!」
「きゃあ、ごめん、ごめん、ごめんなさい!!」
今朝すっぽかしたのを怒っているのだと思い、あたしは平謝りだった。
「何で……謝るんだよ!」
「……え?」
「謝るのは、俺だろ!!」
吐き捨てるように、蘇我は言った。
「……ゴメン」
「……?」
いったい、なんで?
「昨日のこと、南に聞いた」
「!!」
あたしは、手の中のキュウを後ろに隠した。
心配かけたくなかった。
それ以上に……。
「……キュウが死ん……」
「やだっ!! やめてよ!」
言いかけた蘇我の口をふさぐ。
「言っちゃ、ダメ!」
言ったら、本当に実感してしまう。
キュウが、死んだって。
「やめて……」
ぽろぽろと、両目から涙がこぼれる。
声に、嗚咽が混じった。
「蛍……」
蘇我は、辛そうだった。
「敵をとるから」
蘇我はあたしの手をつかんで言った。
「あいつらのつるぎもぶっ壊してやる」
「だ……駄目!!」
「蛍?」
蘇我は眉を寄せた。
「お前だって悔しいだろ? 俺は本当にむかついた。俺の狙うのに、なんで蛍を巻き込むんだよ! 畜生!!」
「でも、だめだよ蘇我!! あたしのような悲しい気持ちを他の人にもさせたくないよ!」
「……あいつら、そんな風に思ってないよ」
「……え?」
あたしが蘇我を見ると、彼はじっとあたしを見ていた。
どきっ、とした。
「あいつらにとってつるぎは単なる道具だよ。蛍ほど、大事にしてない。思い入れなんて無いんだ。だから、壊したって新しいのを作るだけだ」
「そんな……」
「俺はあいつらを許さないから」
「蘇我……」
止めようと、思うのに言葉が上手く出てこない。
そんなの駄目だと思うのに。
「明日、決着をつけてやる」
瞳に強い決意を秘めて蘇我は言った。
あたしは、それ以上何も言えずに黙って蘇我の手をつかんだ。
帰り道あたしも蘇我もしゃべらなかった。
お互い、何を言ったらいいのか分からなかった。
10話 夢の通い路
1話 夢の出会い
2話 日常
3話 新製品
4話 大会前
5話 ライバル?
6話 ネオドランス
7話 とりかえしのつかない戦闘
8話 夢のなかで
9話 剣を求めて
11話 きつねつるぎ
12話 その後
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