5話 ライバル?



 試合が開催された。各学年に一つしか対戦場がないのでみんなその周りに集まった。
 あたしは人垣に押され、ちょっと遠くから5年生の試合を見ていた。
 蘇我は、見る見るうちに勝ち上がっていった。
 同じく、中島くんも。
 蘇我の大鷲は対戦場の中を飛び回り、急襲しては相手を傷つけ、体力を奪っていった。
 それを外から操るのはもちろん蘇我だ。
 カードに手を当て、時には声を出しつつ指示を出し、無傷で勝ち上がっていった。
 一方、中島くんは熊つるぎを使っていた。家の剥製から作ったらしい。
 相手のつるぎを力任せに倒していく。けっこう強いんじゃないかな。
 そしてあっという間に決勝戦。
 蘇我対中島くんだ。
「では、試合を開始します。両者、つるぎを中に!」
 二人がカードを対戦場のポケットに入れる。
 二人は、ちょっと何事か話していた。ここでは、聞こえなかったんだけど。
 話が終わると、お互い反対側について、戦う体制になった。
 審判が手を挙げた。
「はじめ!」
 試合が開始された。
 蘇我の大鷲つるぎは、先手必勝とばかりに熊に襲いかかった。
 中島くんの熊つるぎはそれをかわす。
 その時、蘇我は目を細めた。
 蘇我の意志に反応し、すぐさま反転した大鷲つるぎが熊つるぎの背中を突き刺した。
 いたっ!
 見てて痛そうなのが玉にきずだ。
 思わず私は首をすくめた。
 周囲から歓声がわく。
 蘇我の「よっしゃ!」って声が聞こえた。
 勝ったのかな?
 対戦場を見ると、大鷲がゆうゆう空を飛んでいた。
 対戦場には熊はいなかった。見ると、中島くんが憎々しそうに蘇我を睨んでいた。
 その手にはつるぎがあった。ギブアップしたみたいだ。よかったぁ。
「ずりーそ、蘇我! いつの間に連続技を身に付けていたんだよ!」
「まあ、お前の負けには変わりねえだろ」
「うるせえ、くっそ、覚えてろ!」
 中島くんは悔しそうに言って、その場を去った。
 残された蘇我は、満足そうに自分のカードを引き抜いた。
「五年生での一位は決まったね。じゃあ君、表彰式の後に団体戦があるから、それまで体を休めてなさい」
 係りの人に言われて、頷いて、蘇我はこっちに来た。
「よお、勝ったぜ」
「すごいね、一位じゃん」
 蘇我は「当たり前だろ」と言いつつ得意げだった。素直じゃないんだから。
 四年生の対戦場のところで歓声が上がった。
 あっちも今決勝戦だろうけど、勝ち負けが決まったのかな。
「見に行こうぜ」
「うん」
 四年生の対戦場では、小さい、茶色の髪の男の子と、がっしりした体格の男の子が戦っていた。
 うさぎつるぎと、シェパードつるぎだ。
「え! なんで? うさぎつるぎの方が勝ってるの?」
 犬対ウサギ。本来なら、相手にもならないはず。
「あいつ、ウサギの使い手な、南っていって、連続技がすげえ上手いんだよ」
「すごいね……」
 あたしはぽかんとしてその闘いを見ていた。
 ウサギはその鋭い牙をシェパードの首に食い込ませた。すでにふらふらのシェパードは それを避けられなかった。
 あたしが顔を背けるより早く、ウサギは食らいついたまま勢いよく回転した。
 シギャァアッァァァ!
 シェパードは、断末魔の悲鳴を上げて、倒れた。小さくけいれんしている。
「うわあ!! ニオ!」
 がっしりした体格の男の子は、悲鳴を上げてカードを引き抜いた。
 しかしそのつるぎは、見る間に灰色に変わっていった。そして、つるぎに現れる文字、DEAD。
 くるぎが壊れたのだ。
「ああ……ニオ……」
 男の子は泣き出した。あたしは困って、蘇我を見ると、蘇我は憎々しそうに南って言う男の子を見ていた。
「あいつには絶対負けねえ」
 何だかよく分からないけど、やる気満々だ。
「がんばってね」
「おう」
 そのとき南くんと目があった。
「蘇我さん」
「よお。相変わらずあざといな。やり方が」
「そんなこと言われても。これが僕のやり方だし、変えられないですよ」
 南くんは何の引け目もなくこっちに近づいてきた。
「今日は負けないぜ」
「いやあ、また僕が勝ちますよ」
「言ってろ」
 この子もケンカ友達なのかな。
 あたしは話しに入れなかった。
「こんにちは」
 南くんがあたしに話しかけてきた。
「こんにちは……」
 なんだかどきまぎした。
「去年もいたよね。名前何て言うの?」
「ナンパすんなよ!」
 蘇我がムッとした顔で言った。あたしはきょとんとした。
「何で去年もいたこと知ってるの?」
「だって大泣きしてたし」
「え!」
 見られてたんだ、恥ずかしい!
「あのおかげで、蘇我さんに勝てたようなものだよ。集中力なくしちゃって、しめたね」
「え! 蘇我、この子に負けたの!?」
 てっきり六年生に負けたんだと思っていた。
「!!!」
 蘇我は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「うっさい!」
 今までで最大級の「うっさい」だった。


















6話 ネオドランス









1話 夢の出会い
2話 日常
3話 新製品
4話 大会前
5話 ライバル?

7話 とりかえしのつかない戦闘
8話 夢のなかで
9話 剣を求めて
10話 夢の通い路

11話 きつねつるぎ
12話 その後












狐剣トップへ

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!