第一章 花の行方

その時、世界中が苦しんでいた。
緑は次々と死んでゆき、花も咲かず、実も付けない。
その荒廃は十年ほど前から進んでいた。
人々は飢え、動物も次々と息絶えていった。
この小さな国、トーク国もその一つだった。
「何故だ……。このままでは、この国は……」
若き王、ヤイム・ゼク・トーク王は唇を噛みしめた。
隣にいた若き側近であり、有能な腹心でもあるロナルドは淡々と答えた。
「世間では、この現象を呪いなどと言っているようですが、違います。
ヤイム様は不死の花をご存じですか?」
「不死の花……?」
「はい、この地は数千年に一度、限界を迎え花は咲かず、動植物が死の危機を迎える年が来るそうです。その時、死んだ大地を蘇らせる力を持つのがその花、不死の花です」
「……」
ヤイムは眉を寄せた。
「知らん」
あっさり答える。
若き王は聞いたこともない話だった。
ロナルドはため息をついた。
「もう少し……考えてから答えてください。
まあ、私も先ほど知ったばかりですが。
それがまた、その花の種を煎じて、薬にすると、どんな病気でも治るそうです。しかし、その花は種を落とすと枯れてしまい、その種では土は蘇らないそうです。花を灰にして、空にまかないといけないらしいのですよ」
「……なるほど。だいたいの所は分かった。しかし何故、いきなりそんなに分かったのだ?昨日までは、ロナルドも俺と一緒に困っていたじゃないか」
「それがまた、不死の花が見つかりまして」
「……は?」
「不死の花が見つかりました。我が国で」
ヤイムは口をあんぐり開けた。
ロナルドは落ち着き払って答えたものだった。





「お前は、全くもって人が悪い!」
ヤイムは地下への階段を下りながら怒っていた。
「ヤイム様の驚く顔が見れて嬉しゅうございます」
ロナルドは笑顔だった。
「しかしなぜ、花をさっさと燃やさないのだ?もう、民も動物も限界だぞ」
「それが、燃やそうにも、花がないのです」
「……また騙そうったってそうはいかんぞ」
「いえいえ、そんな、めっそうもない」
ロナルドはひょうひょうと答えた。
「花は我が国にあると言うというのは、間違いないのです。しかしまだ見つかっておりません。その花の持ち主らしき者を、捕まえたのですが、話してくれませんでした」
「さっき見つかったと言ったではないか」
「持ち主が、ということですよ」
「……」
ヤイムはぶっちょう顔だった。
「それ故、ヤイム様が怒るかな、とも思ったのですが、まあ仕方なく……あることをしたのですが……」
「もったいぶるな。早く言え」
「拷問しました」
「なっ……!!」
ヤイムが怒声をあげるより早く、地下の扉を開けロナルドは言った。
「トーク国一の庭師、ホイマー殿と、その娘ご、ファ嬢です」
地下には、十以上の牢があり、そのうちの一つに、突っ伏したまま動かない老人と、その反対側に髪を振り乱した娘がいた。
娘は、ロナルドの姿を見ると、涙をいっぱいに溜めた瞳で叫んだ。
「人殺し!!」





















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